日本アルプスヨガセンターメルマガVol.10

前回1/29発行のメルマガです(若干修正してます)。最近あまりメルマガ登録者が増えていないので、サンプルとして置いておきます。メルマガ登録希望の方はお手数ですがメールでお知らせください。



アシュタンガヨガ練習生のみなさん、おはようございます。


いつもこのメルマガを読んでいただきありがとうございます。


今回も今やっている翻訳のよもやま話などがメインです。


お付き合いいただけたら嬉しいです。


相変わらず、毎日のほとんどはAgelessの翻訳中心です。


今は全体の半分程度の下訳を終えたところ。最初に立てたスケジュールより遅れてます。色々トラブルに見舞われたという言い訳はありますが、これ以上は遅れないようがんばっているところです。


あくまでマイソールクラスが生活の軸となっている僕にとっては数百ページの本の翻訳は簡単な分量ではありません。機械翻訳が目覚ましく進歩を続けているのでそれに助けられもしつつ、でも逆にそのせいで面倒なことも生じます。


今のご時世、契約で禁止されている場合を除けば、ある程度の分量の翻訳で機械翻訳をまったく使わないことはまずないと思います(機密データの管理はもちろん最優先)。下訳などパワーがいる部分は特にです。


AIは大体なんでも教えてくれるし、ネットで調べれば外国の文化、原文のニュアンス、最新のスラングなどの情報も手に入るので、それなりの言語力とその翻訳対象分野の知識がある程度あれば原文の意味を掴めない、ということはあまりないはず。


なので翻訳作業自体のスピードは以前に比べると雲泥の差があると思います。どうしてもわからないところは、ネイティブの知人にwhat’sappで聞くことだってすぐできる。業務上に必要な翻訳程度だったら、最低限の語学力がある人だったら困ることは少ないと思います。これは本当にテクノロジーの進歩に感謝です。


でも、時間をかけて考えて、会心の閃きで導き出した唯一無二かつ最適解と思しき訳が、機械が0.5秒で返してくる翻訳と丸かぶりだったりするのはよくあることで、すると、こっちが折れてどうにか次点の翻訳をひねり出さなければならない、というなんとも皮肉なこともしょっちゅうです(機械翻訳そのままじゃん、というツッコミはなんとしても避けたい。でも、短文だと致し方ないケースも多くある)。なので、前後はするけど機械が出してくる訳は必ずチェックすることになります。そして、そのチェック作業に時間を取られてしまうというこのジレンマ。


トランスクリエーションやトランスライティングという言葉も使われはじめ、翻訳の業界もどんどん変化しています。文芸翻訳だったら一年に一冊訳したらそれで飯が食える、という時代もあったようですが、それも今は昔。


廃業する翻訳者が大勢いるそうです。


最近読んで面白かったとある翻訳者さんの記事

「もうすぐ消滅するという人間の翻訳について」


上の記事のような超一流の翻訳者さんと比べるのはおこがましいですが、僕のフリーランスの仕事がほぼなくなったのも機械翻訳の影響が大きかったと思うし、本当、機械は人を助けてくれるけど、常に競合相手でもあるわけで、この21世紀に産業革命の頃の労働者に強烈なシンパシーを感じながら仕事をしています。


そうはいっても相変わらず、翻訳自体は楽しいです。


今回も頭を悩ませるところはどこまで原文の雰囲気を残すべきか、です。Astanga yoga Anusthanaは教科書という手前、自然な訳出に力を注ぐというよりは、とにかくできるだけ原文の意味を取りこぼさないように気をつけました(いわゆる従来の翻訳)。


一方のAgelessは自己啓発とかハウツー本の色合いが濃いものなので、読みやすさを最優先したいというのが正直なところ。でも、そこに重点を置くと、原文の雰囲気が薄れてしまって面白くない、というジレンマが生じます。


原文には植物や食べ物、神様の名前などが英名や現地の呼び名で登場します。和名があるものもあるので、和名を当てた方が読みやすくはありますが、すると一気に異国情緒がなくなります(ジャグリーを黒糖、としてしまうと俄然つまらなくなりますよね笑)。


なので、現地の呼び名が使われているものは大体は、検索でなるべくひっかりやすいカタカナに転写するという方針で進めているところです(正確な発音よりも検索結果の件数優先)。字面を見てわからなくてもカタカナで検索すればすぐ出てくるので、少し手間に感じられるかもしれませんがその方が面白いだろうな、と。


気がつくと知らない神話のエピソードなどを読みふけってwikiスパイラルに陥ってしまうのですが、それも含めて楽しみながら、良い勉強をさせてもらっています。


今回も「ヨガ」にするか「ヨーガ」にするかはまだ検討中です(前回も最後の最後まで悩んだ)。インドリスペクトでいくならもちろん「ヨーガ」だけど、「ヨガ」の定着っぷりは揺るぎないし、そもそも空海が持ち込んだ時点では「瑜伽(ゆが)」であり、それが転じて「ヨガ」になったならそれはもうその歴史リスペクトでいくべきでは、と思いきや東京の地名「用賀」の由来は鎌倉時代に当時そこにヨガ道場があったからという説があるわけだから鎌倉の時点で「ヨウガ」。さて、どうする。という具合です笑。今回もギリギリまで悩むと思います。


スピリチュアルも例によって「霊的」とは訳しづらいし(以前書いたブログ 「スピリチュアルプラクティスってなんですか」「精神的」がはまるところもあるけれど、やっぱりカタカナが有力かな、となっています。「mind」は今度こそ「マインド」でいくかどうするか、とか、悩むところは大体一緒。


「八支則(肢則)」を採用するかも今回も考え中です。響きがキレイだし字面で意味がなんとなくわかる素晴らしい言葉だと思うのですが、日本語にも多分漢語にも「支則」という言葉はありません。誰かが「ashtanga」か「eight limbs」の訳として作ったんだろうと思っていて、以前から誰が初めてこの言葉を使ったか調べようと思いつつ、時間が取れずにいるという状況です。


どんな言葉もいつか誰かが作ったものなわけだから、あまり深く考えなくて良い気もしてますが、こういう性分なので仕方ありません。笑。もし「八支則」という言葉の成り立ちを知っている人がいたら、教えてくれたら嬉しいです。


と、ここまで翻訳の話ばかりで興味がない人には申し訳在りません。


ただ、改めてこの仕事は面白い仕事だな、と思います。日本は大昔からの翻訳大国。「I love you」の訳についての夏目漱石のエピソードから始まりゲームや小説の名(迷)誤訳など、おもしろい逸話は数限りありません。もうしばらくは翻訳関連の話題が続くと思うので少しづつ紹介していきますね。


これからもっと翻訳業界は厳しくなると思います。僕の知る限りでも10年前には「10年後は翻訳の仕事はなくなる」と言われていました。


でも、知的で高度な芸術としての翻訳は必ず残ると思います。どの分野も同じだと思いますが、人は機械が差し出すデータではなく、どこまでいっても結局は人の心の在りように関心を持つと思うからです。多少いびつでも、工業製品よりも人が作ったものに愛着を感じるのはきっと万国共通で、だからヨガ講師の仕事も残り続けると思っています。


chat GPTと人間が恋愛関係に陥る、というケースはしばしば話題になりますが、やっぱりそれは無理なんじゃないかな、とか。いつも正しくて、行儀よく、自分の想定から外れない受け答えよりも、予想外の展開に人は心を惹かれますよね。相手が取りやすい球ばかり投げていたら、言葉のキャッチボールもすぐに飽きてしまうと思います。でも、AIもすでに変化球を交えてきたりするようで、、、これから世界がどうなっていくのか見ものです。


この話に関連して面白かった映画

「her 世界でひとつの彼女」


と、そんな具合に、紹介したい翻訳関連の話はまだまだあるのですが、きりがないのであと一つだけにしておきます。


相当話題になったし僕もあちこちでおすすめしまくったインド映画の「RRR」。


映画自体が最高におもしろいわけですが、当時その翻訳も話題になっていたようです(僕は公開からだいぶ後に観ました)。


よかったらお時間があるときにこの記事を読んでみてください。


僕もこのセリフを見たとき、ハッとしたのを覚えています。笑。


大ヒット映画「RRR」話題の名字幕「ナートゥをご存じか」は、なぜ「ご存じか」だったのか? 翻訳した2人に聞いてきた


RRRをまだ観てない人はぜひどうぞ!

日本アルプスヨガセンター

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