スピリチュアルプラクティスって何ですか

アシュタンガヨガを練習していると、「スピリチュアルプラクティス」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。言葉の響きから何となーく肉体的な鍛錬とは異なる何かをイメージすると思いますが、実際何かと言われると説明するのが難しい言葉だと思います。


僕の先生は端的に「ハードワークをすること」と伝えてくれたこともありますが、それだとあまりに簡潔すぎるのでここでもう少し説明しますね。


※ちなみにこの投稿はとある団体のHP上の記述を参考に書いています。とても素晴らしい説明なので参考にさせていただき使わせていただいているのですが、その団体自体の紹介は訳あって憚られるのでリンクはしないでおきます。


「spiritual」という単語を英和辞典で引くと「精神的な」「霊的な」「教会の」という意味が上の方に出てきます。欧米の人などはまず教会をイメージするそうですが、日本語に訳すときは「精神的な」とするとしっくりくる場合が多いかもしれません。


ですが、「精神的」というだけではなんか微妙に噛み合わないなーという場面も多いと感じてまして。結構前になるのですが色々調べた結果、先生の教えとマッチする説明にたどり着きました。


今の日本ではスピリチュアルという言葉に、

「何となく超自然的なパワーに関する何か」

というイメージがつきまとっている様に感じます。「パワースポット」や「パワーストーン」「オーラ」などのような、ある種オカルト的なカテゴリですね(オカルト好きの皆様すみません、ディスってません。おみくじとか占いとか結構好きです)。


テレビなどの影響もあるのかもしれませんが、このイメージは結論から言うと間違いで、事の発端は明治期に翻訳の過程で「降霊術」などの意味を持つ別の英単語「spiritualism」と混同されたのが原因の一つではないかとのこと。


そしてそのオカルト的なイメージを除いた「精神的な」と言う訳もそもそも日本語の「精神」という言葉が「心」や「魂」などを意味するためどうしても意味合いが曖昧になっているように感じます。


この曖昧さを取り払ってくれる「spiritual」の良い使用例が映画の「ラストサムライ」に出てきます。


「ラストサムライ」を見たことがない方のためにざっくり説明すると、明治維新直後の日本にやってきたトム・クルーズが、某大名のお抱え軍帥となって活躍すると言う話。物語中、心に傷を負い酒浸りとなり体も負傷したトム・クルーズは山間の城下町にたどり着きます。そして、そこで毎日朝早くから懸命に働き、自らを鍛え、謙虚に暮らす村人や武士の生活のあり様を見てこんなことを手紙に綴ります。


「自分は故郷にいるときもまともに教会に通う様な人間ではなかったが、ここでは何かspiritualなものを感じる


これを「精神的」と訳してしまうとどうも意味が通りません。


ちなみに欧米の方は神社の鳥居をくぐる時などに「スピリチュアルな気持ちになる」とのこと。この場合訳として「厳粛な」という言葉が当てられたりする様です。こちらの方が「精神的」よりはラストサムライの場合にもすんなりきそうではありますが、やはり完全にしっくりとはこないなーと思います。厳粛な気持ちから、心を打たれて手紙を綴る様な感動は起きづらいと思うからです。


ラストサムライではスピリチュアルは「神聖な」と訳されていたのですが、村人の暮らしを見た上での感想としてはそれもやっぱり何か違うと感じました。


で、どうにも一言では日本語に訳しきれないスピリチュアルという言葉を、上の例などにぴったりはまるように丁寧に訳した言葉が以下です。めっちゃ長いですが


「人の心の奥底にある、善良さや美しさや素朴さが持つ力についての」


がスピリチュアルの日本語訳。冒頭に記したように僕が訳した訳ではなく、多少整理をして原文と変えてあるのですが大体はおんなじです。僕はこの翻訳が大好きで、この文章をひねり出した人を心底尊敬しています。


超自然的な何かというよりは、あくまで「人」にそもそも備わっているもので、「善良であること」「美しさ」「素朴さ」を美徳とし見出し、そこに力を感じているというところが大切で、神社の鳥居をくぐる時も、謙虚に勤勉に暮らす人々を見た時も琴線に触れる心のポイントはそんな部分なのだと思います。


そして、そういった素朴で美しい心のあり様を育む練習がスピリチュアルプラクティス。それは確かに「ハードワークすること」なのだと思います。


ヨガの練習は様々な言葉で表現されて、どれも間違いではないのでしょうが、僕はこの解釈がお気に入り。どんな態度で臨んでも何かしらの結果は得られると思いますが、みなさんもヨガの練習はスピリチュアルプラクティスとして取り組んでもらえたら嬉しいです。


これから寒さが到来するまでは一年で一番練習が捗る時期。一日一日を大切にスピリチュアルプラクティスを重ねていきましょう!

日本アルプスヨガセンター

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